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外壁と水切りの隙間はふさいでいい?——あの隙間は、通気の入口です

あの隙間には役割があります。家の壁の下のほう、基礎との境目に回っている金属の板——あれが水切り(みずきり)です。その板と外壁の間に細い隙間が空いていて、その板と外壁の間に細い隙間が空いている。「施工不良では」「虫が入る」「コーキングで埋めたほうがいいのでは」——そう思って調べに来られた方へ。

あの隙間は、空気の入口です。国土技術政策総合研究所(国土交通省の研究機関)が出している「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」に、寸法まで書かれています。ふさぐと、入口がなくなります。(2026年8月30日確認)

このページの内容全14項目

結論——ふさがないでください。理由は「通気層」です

いまの木造住宅の外壁は、多くが「外壁通気構法」という作り方になっています。外壁材のすぐ内側に空気の通り道(通気層)を設けて、壁の中に入った湿気を空気の流れで外に逃がすという考え方です。

その通気層には、入口と出口が要ります。ガイドラインはこう書いています。

通気層の入口と出口を明確にし、通気層の経路に滞りが無いよう連通させる。入口は土台水切り部分として、出口は小屋裏換気孔(軒裏、妻、棟等)に通気(小屋裏換気孔に通気する構造)又は軒天見切り縁に通気する。

「入口は土台水切り部分として」と、はっきり書かれています。あなたが見ている隙間が、その入口です。

別の箇所では、もう少し具体的に説明されています。

外壁通気層の入口は外壁材の下端部が入口となり、一般的には土台水切り部分から外気を取り入れる。階層が途切れる下屋、オーバーハング、バルコニーなどの上階外壁の下端部も通気層の入口となるため、空気が取り入れられるよう 10〜15mm 程度の空間が取れるように留意する

つまりあの隙間は、あって当たり前のものです。むしろ「10〜15mm程度の空間が取れるように」意図して確保するものとされています。

逆に、ここをふさぐと壁の中の湿気が抜けなくなります。寒い地域では、抜けない水分が外壁材の中で凍って材料そのものを壊すこと(凍害)にもつながります。外壁材メーカーが凍害を再現する実験も、サイディングの裏面から水分を吸収させて行われています。

新築でこの隙間を見つけて、不安になっている方へ

この隙間を調べている方には、塗り替えを考えている方だけでなく、引き渡し前後の新築で見つけて「施工不良ではないか」と心配になった方がいます。先にお伝えします。

基礎の上、水切りと外壁の間に隙間があるのは、設計どおりです。前の章のとおり、そこは外壁通気層の入口にあたります。ふさがっているほうが問題で、空いているのが正常な状態です。

「新築なのに壁の下に隙間がある」「基礎と建物の間が空いている」という見え方をしますが、家は下から基礎・土台水切り・外壁の順に積み上がっていて、その境目に空気の通り道が要ります。隙間ではなく、入口です。

それでも気になるときに、見ておく3点

ただし「隙間があれば全部正常」という話でもありません。次のような状態なら、施工会社に確かめる価値があります。

見え方聞くこと
隙間がほとんど無い、または場所によって極端に狭い「通気層の入口は確保されていますか」。ガイドラインが示す目安は10〜15mm程度ですが、これは法律の数字ではありません
一部だけモルタルやコーキングで埋まっている「ここを埋めた理由を教えてください」。虫や見た目のために埋めることがありますが、通気の入口をふさいでいないかの確認です
水切り自体が浮いている、波打っている、外れかけている「固定はこの状態で正しいですか」。水切りは雨水を外へ落とす部材なので、傾きや浮きは別の問題になります

ここに挙げたのは「聞く材料」であって、写真や記事から良し悪しを判定できるものではありません。図面と現場を見た人でなければ答えられない部分です。引き渡し前なら施工会社に、引き渡し後でも保証の期間内であれば、その窓口に相談してください。

そして、いちばん避けたいのは「気になるから自分で埋める」です。理由はふさぐと何が起きるのかのとおりで、埋めた影響は外から見えないまま壁の中で進みます。

「うちには、その隙間が見当たりません」という方へ

ここまで読んで、自分の家を見たら隙間が無かった——という方もいると思います。そのまま「欠陥だ」と考えないでください。理由は3つに分かれます。

考えられることどういう状態か確かめ方
①そもそも通気層が無い外壁を下地に直接張る納まりだと、逃がす空気の通り道自体がありません。古いモルタル外壁などに見られます外壁の種類と築年数。図面に「通気」の文字があるか
②あとから埋められた過去の塗装や修理のときに、コーキングで通されたことがあります。見た目は整うので、悪気なく行われることもあります隙間があるはずの線に沿って、色の違うコーキングが1本通っていないか
③隙間はあるが見えにくい水切りの形状や、外壁の張り方で影になって見えないことがありますしゃがんで下から見上げる。名刺やハガキが差し込めるかで分かります

①なら、隙間が無いのは正常です。通気工法でない外壁に通気層の入口を求めても意味がありません。この場合、話は「隙間」ではなく「その外壁をどう塗り替えるか」に変わります。

問題になるのは②です。ガイドラインが繰り返し言っているのは寸法の厳密さではなく、経路に滞りが無いよう連通させることのほうでした。入口が塞がれていれば、通気層があっても働きません。——同じガイドラインが「通気層の閉塞」という項目を立てているのは、そのためです。

②だと分かったときに、聞くこと

いきなり削り取る前に、「いつ、誰が、なぜ埋めたのか」を確かめてください。意図があって塞いだ場合(別の水の入り方を止めるためなど)もあり得ます。

そのうえで、通気層のある外壁なら、入口は開けておくのが本来の納まりです。次の塗り替えのときに、「ここは開け直しますか」と聞いてください。何社かに見てもらうと、この一点への答え方で通気工法を理解している会社かどうかが分かります。

隙間の寸法には目安があります。ただし法律ではありません

同じガイドラインに、部位ごとの寸法をまとめた表があります。

部位開口寸法設置場所
外壁通気層入口10〜15mm土台水切り部、オーバーハング部、下屋雨押え部
外壁通気層15〜21mm構造体と外壁材との間
外壁通気層(横胴縁)1.82mにつき30mm程度横胴縁の通気間隔
外壁通気層(開口部周辺)30mm程度通気層と開口部周りの下地の隙間
外壁通気層出口部材による軒天見切
屋根通気層30mm以上屋根断熱層の外側と下葺材の間

ここで大事なのは、この表のすぐ前に置かれている但し書きのほうです。

しかし、各部位の寸法、配置方法に関しては法律等で定められたものは特になく、施工例や業界規格、基準などで定めているのみである。

「10〜15mm」は法律の数字ではありません。目安です。ですから「うちは12mmしかないから違法だ」といった話にはなりません。逆に「ぴったり15mmでなければおかしい」ということもありません。

見るべきなのは寸法そのものより、「空気が通れる状態か」です。ガイドラインが繰り返し言っているのは寸法の厳密さではなく、「経路に滞りが無いよう連通させる」ことのほうです。

ふさぐと何が起きるのか

ガイドラインは、通気層がふさがること(閉塞)を明確に避けるべきものとして扱っています。

透湿防水シートのたるみや繊維系断熱材の押込み過ぎなどによる通気層の閉塞が起きないように注意する。

これは壁の中の話ですが、入口をふさぐのも同じことです。出口(軒裏や棟)が空いていても、入口がなければ空気は流れません。

通気層が働かなくなると、壁の中に入った湿気の逃げ道がなくなります。ガイドライン全体が「壁体内結露」を防ぐことを目的に書かれた資料で、通気層はそのための仕組みとして位置づけられています。

そしてこれは外から見えません。塗装のように「剥がれてきた」と分かるものではなく、壁の中で進みます。だから、良かれと思ってふさいでしまうことが最も避けたい行為になります。

床下換気にも関わることがあります

基礎と土台の間にパッキンを挟んで空気を通す「ねこ土台」という作り方が、いまは主流です。

平成24年度の住宅金融支援機構の調査によると、ねこ土台を使用した床下換気措置が約8割以上になっている。ねこ土台を使用する際には仕上モルタルや土台水切り、防鼠材等の金物で床下換気孔の有効換気面積を低減させないよう施工に留意する必要がある。

つまり土台水切りまわりは、外壁の通気だけでなく床下の換気にも関わる位置にあります。ここを塗装工事のついでに埋めてしまうと、影響が二重になる可能性があります。

住んでいる側でもふさいでしまうことがあります

基礎周辺は住まい手の植栽などにより換気を妨げる要素もあるため床下換気の重要性を引渡しの際の注意事項として意識付けさせることも重要である。

これは今日すぐ確かめられることです。壁際に土を盛っていないか、砂利や落ち葉が溜まって隙間が埋まっていないか、プランターや室外機カバーで塞いでいないか。脚立も工具も要りません。家のまわりを一周して、金属の板の上側の線が見えているかを見るだけです。

もうひとつ、ふさがない理由があります——シロアリの点検口になっているからです

ここまでは湿気の話でした。その湿気は、シロアリが好む条件です。床下の換気が効かなくなると、シロアリが出やすい環境に近づきます。前の節で引いた住宅金融支援機構の資料が床下換気を重く扱っているのは、結露だけの話ではありません。

そしてもうひとつ。この隙間のあたりは、シロアリを見つける場所でもあります。

シロアリは土の中から木部へ向かうときに、土を固めた道を作ります。蟻道(ぎどう)と呼ばれるもので、基礎の外側を上がってくることがあります。基礎と外壁の境目——つまり水切りのまわりは、それが通る場所です。

隙間が見えているということは、そこを目で確かめられるということです。モルタルや コーキングで埋めてしまうと、蟻道は壁の裏を通ることになり、外から見えなくなります。

蟻道らしきものを見つけたら、壊さないでください。

シロアリ駆除の各社が共通して書いていることです。——崩したり殺虫剤をかけたりすると、シロアリが移動してしまい、どこまで被害が広がっているかが分からなくなります。写真を撮って、そのままにして、駆除の専門業者に見てもらってください。

これは塗装の話ではありません。塗装業者の仕事の範囲外です。「ついでに埋めておきますね」と言われたときに、断る理由がひとつ増える、という意味で書いています。

出典=シロアリ駆除各社が公開している点検の手引き(アサンテ/リムケアほか)に共通する記述です。公的な基準ではなく、業界で共通して案内されている扱いとしてお読みください。点検そのものは、しろあり防除施工士のいる会社に頼むのが確実です。

「基礎と外壁の隙間」を探して来た方へ

この隙間は、調べ方によって呼び名が変わります。「外壁と水切りの隙間」「基礎と外壁の隙間」「基礎の上の隙間」——どれも同じ場所を指していることがほとんどです。

どこの隙間を見ているのか

家の外に立って、壁の下のほうを見てください。下から順に、こう積み上がっています。

  • 基礎——地面から立ち上がっているコンクリートの部分
  • 土台水切り——基礎の上にかぶさっている、金属の板。雨水を外へ落とすためのもの
  • 外壁——水切りの上から始まります

つまり「基礎と外壁の隙間」と見えているものは、多くの場合「水切りと外壁の間」です。そしてそこが、通気層の入口にあたります。

サイディングの家でも同じです。外壁材が窯業系サイディングでも金属サイディングでも、下端は水切りの上で止まっていて、その境目に隙間ができる——構法としては同じ考え方です。

コーキングで埋めていいですか

埋めないでください。「基礎 水切り 隙間 コーキング」という調べ方をされる方がいますが、ここをコーキング(シーリング)で塞ぐのは、通気層の入口を閉じる行為です。

塗装工事のときに「隙間があるので埋めておきますね」と言われることがあります。良かれと思っての提案であることが多いのですが、前の章のとおり、ここは外壁の通気と床下の換気の両方に関わる位置です。埋める前に、その理由を聞いてください。

虫の吹き込みが理由なら、埋めずに対応する部材があります。「埋める」以外の答えを持っているかどうかで、会社の理解度が分かります。

基礎そのものが気になっている場合は、別の話です

隙間ではなく、基礎のコンクリート自体——ひび、汚れ、塗るべきかどうか——を調べていた方は、そちらは論点が分かれます。「基礎は塗ってはいけない」という説もあり、答えは「何を塗るか」で変わります。くわしくは基礎の塗装は必要?にまとめました。

なお基礎まわりで見ておくとよいのは、隙間が何かで埋まっていないかです。壁際に土を盛っていないか、砂利や落ち葉が溜まっていないか。これは今日すぐ確認できます。

隙間から虫が入ってくる——シロアリとは、対策が逆になります

この隙間で虫の相談をされる方には、不安の中身が2つあります。そしてその2つは、やるべきことが逆になります。先に切り分けてください。

不安の中身虫の来かたやること
隙間から虫が入ってくる(この章)隙間そのものを通って、外から吹き込む・潜り込む目の細かい部材でふさぐ。ただし通気は残す
シロアリが心配隙間ではなく、基礎の外側に土の道(蟻道)を作って上がってくる見えるままにしておく。埋めると蟻道が壁の裏を通り、外から確認できなくなる

同じ「虫がいや」でも、片方はふさぐ話、もう片方はふさがない話です。ここを混ぜたまま「虫が入るので埋めてください」と頼むと、シロアリを見つける場所を自分で消すことになります。

入ってきた虫は、どこへ行くのか

ここで一度、その隙間の先がどこにつながっているかを確かめておきます。結論の章で引いたガイドラインの文が、そのまま答えになっています。

通気層の入口と出口を明確にし、通気層の経路に滞りが無いよう連通させる。入口は土台水切り部分として、出口は小屋裏換気孔(軒裏、妻、棟等)に通気(小屋裏換気孔に通気する構造)又は軒天見切り縁に通気する。

ガイドラインが書いている道は、土台水切りから入って、壁の中を上がり、小屋裏の換気孔へ抜ける道です。室内へ向かう道ではありません。外壁通気層は、外壁材のすぐ内側——つまり断熱や気密の層より外側にある空間だからです。

ですから「部屋に虫が出る」の原因が、この隙間だとは限りません。室内に出てくるには、通気層から室内側へ抜ける別の穴を通る必要があります。先に見るのは、そちらです。

  • エアコンの配管を通した壁の貫通穴——パテが痩せて隙間ができていないか
  • 給排水管・給湯管が壁や床を抜けている部分
  • 換気扇や給気口のフード、その防虫網が破れていないか
  • サッシまわり、玄関の戸当たり

これは「隙間から虫は入らない」という意味ではありません。隙間の先が壁の中である以上、そこに入った虫が室内へ出るには、もうひとつ穴が要るという話です。実際の家では配管や配線がいくつも壁を貫通しているので、どこから来ているかは、現場を見なければ分かりません。

ふさがずに、吹き込みだけを止める部材があります

ガイドラインには、この状況に対応する部材が図として載っています。「防虫通気材による吹込み防止例」(図4.3.8)という図です。

通気を止めずに、虫や雨の吹き込みだけを抑える部材があります。目の細かい材を通気の入口に入れる考え方で、上階の外壁下端など風圧が強くなる場所で使われるものとして紹介されています。

ですから、虫が気になるときの相談の仕方は「隙間を埋めてください」ではなく「防虫通気材で対応できますか」になります。この聞き方をすると、通気構法を分かっている会社かどうかも同時に分かります。埋めましょうと即答されたら、一度立ち止まる材料になります。

今日、道具なしでできること

部材を頼む前に、虫が集まりやすい状態になっていないかを見てください。ガイドラインは、住まい手側の要因にも触れています。

基礎周辺は住まい手の植栽などにより換気を妨げる要素もあるため、床下換気の重要性を引渡しの際の注意事項として意識付けさせることも重要である

  • 壁際に土を盛っていないか——花壇や盛り土が水切りの高さに迫っていないか
  • 落ち葉・砂利・枯れ草が隙間に溜まっていないか——溜まったものは虫の住処にもなり、通気の入口もふさぎます
  • プランターや室外機、物置を壁にぴったり寄せていないか

取り除くだけなら、今日できます。そしてこれは、虫の話と通気の話の両方に効く、いちばん先にやることです。

水切りの塗装がすぐ剥がれるのは、素材のせいです

ここからは塗装の話です。「水切りだけ塗装が剥がれてきた」「触ると粉になって落ちる」という相談が多い部分でもあります。

理由ははっきりしています。水切りは、外壁とは別の素材だからです。多くは金属で、外壁用の塗料がそのまま密着する前提の面ではありません。

国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(令和7年版)には、金属面をどう塗り替えるかが外壁とは別立てで定められています。水切りのような亜鉛めっき鋼面の「下地調整」(表7.2.3)です。要点だけ書くと、こうなります。

金属面で欠かせないのは「油分を落とすこと」と「表面を研磨すること」です。塗り替えの下地調整の表では、傷んだ塗膜や錆を落としたあと、汚れと付着物の除去、「溶剤ぶき」、そして研磨紙(P240〜320)で全面を平らに研磨する工程が続きます。種別は「特記がなければ、RB種」=劣化しぜい弱な部分と錆を落とし、活膜は残す方法です。まだ一度も塗られていない水切りを初めて塗る場合は、表の注記で「RA種とし、工程1を省略する」とされていて、汚れの除去・溶剤ぶき・研磨紙ずりから始めます。

この工程が抜けると剥がれます。金属面には製造時の油分が残っていることがあり、そのまま塗ると塗膜がのりません。高圧洗浄で水をかけただけでは、油分は落ちません。水切りだけ先に剥がれてくる家は、ここが原因になっていることがあります。

もうひとつ、新しく塗る場合の亜鉛めっき面の表(素地ごしらえ)には「錆落し」の工程がありません。めっきが生きていれば落とすべき錆が無い、という前提です。裏を返すと、錆が浮いている水切りは、めっきが切れた状態ということになります。塗り替えの表では、その錆は「既存塗膜の除去」の工程で落とします(新しく塗る場合の表は下塗りのページに載せました)。

下塗り材も、外壁用とは別のものが定められています

さらに錆止め塗料の種別も表になっています(同じ仕様書の表7.4.2)。

種別錆止め塗料塗付け量標準膜厚適用
Az種一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント0.10kg/㎡30μm屋外、屋内
Bz種変性エポキシ樹脂プライマー0.14kg/㎡40μm屋外、屋内
Cz種水系さび止めペイント0.11kg/㎡30μm屋内

そして「特記がなければ、鋼製建具等はAz種、その他はBz種とする」と定められています。

ここから読み取れるのは「金属には金属用の下塗りが要る」ということです。外壁に使うシーラーとは別物です。下塗りの考え方そのものは、こちらで整理しています。

なお、この仕様書が定めているのは「亜鉛めっき鋼面」です。いまの住宅の水切りにはガルバリウム鋼板、ステンレス、アルミ、樹脂など複数の素材があり、すべてがこの表の対象というわけではありません。素材によって必要な下塗りは変わります。だからこそ「うちの水切りは何でできていますか」を先に聞く意味があります。

では、水切りは「塗らない」ほうがいいのか

「塗るとすぐ剥がれるなら、塗らなければいいのでは」——これもよく検索されています。ただ、国の仕様書は塗る前提で書かれています。

同じ仕様書には、亜鉛めっき鋼面の下地調整(表7.2.3)と、亜鉛めっき鋼面用の錆止め塗料の種別(Az種・Bz種)(表7.4.2)が、わざわざ別立てで定められています。「めっきしてあるから塗らなくていい」という扱いにはなっていないということです。

だから、問いの立て方が違います

正しくは「塗るか、塗らないか」ではなく「下地調整と錆止めをやるかどうか」です。

やらずに上塗りだけ乗せれば剥がれます。剥がれたのを見て「水切りは塗らないほうがいい」と結論づけると、次も同じことが起きます。——原因は「塗ったこと」ではなく、下地を整えないまま塗ったことのほうだからです。

そして、塗らずに放置した場合はどうなるか。水切りは金属です。錆びて穴が開けば、塗装の範囲を超えます。ここは屋根や雨樋と同じで、塗らない選択が「何もしない」と同じ意味になる部位です。

ただし、塗ることと、隙間を埋めることは別の話です。水切りを塗るのは問題ありませんが、塗料やコーキングで隙間を通してしまえば、このページの本題に戻ります。「水切りは塗ってください。ただし外壁との隙間は残してください」——これが伝え方です。

見積書では、どう書かれているか

水切りは「付帯部」としてまとめられることが多い部分です。雨樋、軒天、破風、雨戸、シャッターボックスなどと一緒に扱われます。

付帯部は、見積書の金額差がいちばん出やすいところです。塗る範囲を減らせば安くなり、増やせば高くなります。総額だけを見比べると、この差が「安い会社」に見えてしまいます。壁の面積のように誰が測っても同じになる数字ではないため、会社ごとに幅が出ます。付帯部の考え方は、こちらにまとめています。

見積書で確かめたいのは、次の2点です。

  • ①水切りが対象に入っているか——「付帯部一式」だけだと、何が含まれるか分かりません。項目として書かれているかを見ます
  • ②金属部の下塗りが別に書かれているか——外壁の下塗りと同じ材料名で通っている場合は、聞く価値があります

どちらも契約前に、書面だけで確かめられる内容です。工事が始まってからでは、水切りの下に何が塗られたか外から見えません。

錆びている・穴が開いている場合は、塗装の範囲を超えます

塗装で対応できるのは「塗膜が劣化しているが、板そのものは生きている」状態までです。

板に穴が開いている、めくれて浮いている、押すとぼろぼろ崩れる——こうなると塗っても止まりません。交換や部分的な板金工事の話になります。塗るだけで済むのか交換が要るのかは、実際に見てもらわないと決まりません。写真だけの判断は難しい部分です。

ここで注意が要るのは、土台水切りの交換は、外壁材の下端に差し込まれている部材を触る工事だということです。外壁材との取り合いや防水シートの端部が絡むため、塗装工事とは別の判断が要ります。塗装会社が「うちでは触らない」と答えることもあり、それは逃げではなく妥当な線引きであることもあります。

「後付け」を考えている場合も同じです。水切りは外壁を張るときに一緒に納める部材で、あとから付け足すと、外壁材との重なりや防水の納まりをどう処理するかという問題が出ます。「ホームセンターで買ってきて付ける」で完結する部位ではありません。

自分でコーキングするのは、いちばん避けたい選択です

隙間が気になるからと市販のコーキング材で外壁と水切りの間を埋める——これは、ここまで見てきた通り通気層の入口をふさぐ行為にあたります。

しかも一度打ってしまうと、取り除くのに手間がかかります。塗り替えのときに撤去が必要になり、その分が費用に乗ることもあります。

例外として、水切りと基礎の間や、部材の継ぎ目にシーリングが打たれていることはあります。ただし「外壁の下端と水切りの上端の間」は通気の入口なので、位置がまったく違います。どこが埋まっていてどこが空いているべきかは、素人判断が難しい部分です。気になったら、まず見てもらうほうが早く済みます。

まとめ——今日できる確認と、聞くべきこと

  • ①家を一周して、水切りの上の線が見えているか見る——土・砂利・落ち葉・プランター・室外機で埋まっていたら、どければ済みます
  • ②隙間が空いていても、それは正常です——ガイドラインでは10〜15mm程度の空間を確保するものとされています
  • ③虫が気になるなら「防虫通気材で対応できますか」と聞く——「埋めましょう」と即答されたら、一度立ち止まる材料になります
  • ④塗装が剥がれているなら、下塗り材を聞く——金属面には金属用の下塗りが要ります
  • ⑤穴・めくれ・崩れがあるなら、塗装ではなく交換の話——塗っても止まりません

この5つのうち、①と②は今日ひとりでできます。③〜⑤は、見積もりを取るときに聞けばいい内容です。同じ家を何社かに見てもらうと、水切りをどう扱うかで会社の姿勢が出ます。

よくある質問

外壁と水切りの間の隙間はふさいでいいですか?

ふさがないのが原則です。国土技術政策総合研究所の「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」では、外壁通気層の入口は外壁材の下端部で、一般的には土台水切り部分から外気を取り入れるとされています。ここをコーキング等でふさぐと通気層の入口がなくなります。同ガイドラインは通気層の閉塞が起きないように注意すること、通気層の入口と出口を明確にして経路に滞りがないよう連通させることを求めています。

外壁と水切りの隙間は何ミリが正しいのですか?

同ガイドラインの表6.1では、外壁通気層入口の開口寸法は10〜15mm、設置場所は土台水切り部、オーバーハング部、下屋雨押え部とされています。ただし同じ資料には「各部位の寸法、配置方法に関しては法律等で定められたものは特になく、施工例や業界規格、基準などで定めているのみである」とも書かれています。法律で決まった数値ではなく、目安です。

隙間から虫が入ってきます。どうすればいいですか?

ふさぐのではなく、防虫通気材を使う方法が同ガイドラインに図として示されています(図4.3.8 防虫通気材による吹込み防止例)。通気を保ったまま虫や雨の吹き込みを抑える部材です。コーキングで埋めてしまうと通気層の入口がなくなるため、まず塗装会社や工務店に防虫通気材で対応できるか相談してください。なお、シロアリが心配で埋めたいと考えている場合は逆で、この隙間は蟻道を目で確かめられる場所なので、埋めずに見えるままにしておくほうが有利です。

水切りの塗装がすぐ剥がれるのはなぜですか?

素材と下塗りの問題であることが多いです。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(令和7年版)では、塗り替えの亜鉛めっき鋼面の下地調整として油分の除去(溶剤ぶき)と研磨紙ずりが定められ、錆止め塗料は変性エポキシ樹脂プライマー等が指定されています。外壁用のシーラーをそのまま塗るものではありません。見積書で水切りの下塗り材が何か確かめる価値があります。

水切りは塗装しないといけませんか?

素材によります。鋼板系で塗膜が劣化して錆が出ているなら塗る意味がありますが、アルミやステンレス、樹脂製のものは事情が変わります。付帯部は見積書で金額差が出やすい部分なので、何を塗って何を塗らないかを書面で確かめてください。

水切りの隙間が土や砂利で埋まっています。問題ありますか?

通気の入口がふさがるため、取り除いたほうがよい状態です。同ガイドラインには「基礎周辺は住まい手の植栽などにより換気を妨げる要素もあるため床下換気の重要性を引渡しの際の注意事項として意識付けさせることも重要である」とあります。植栽や土を壁際に寄せすぎない、という話です。

参考にした情報

  • 国土交通省 国土技術政策総合研究所「木造住宅外皮の換気・通気計画ガイドライン(案)」第XⅢ章より——4.3.2(通気層の入口と出口、通気層の閉塞)、4.3.3[外壁通気の納まり例]1)外壁通気の入口部の納まり(図4.3.7 土台水切りの納まり例、図4.3.8 防虫通気材による吹込み防止例)、4.6.1[床下換気]、表6.1[換気・通気経路の寸法]。なお同章の図の一部は、住宅金融支援機構編著「【フラット35】木造住宅工事仕様書」からの抜粋として掲載されています
  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」——7.2.4[亜鉛めっき鋼面の下地調整](表7.2.3・特記がなければRB種・無塗装既存亜鉛めっき鋼面はRA種とし工程1を省略)、7.4.2[塗料種別](表7.4.2 亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料の種別)。塗り替えの工程(2026年9月11日確認)
  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18章 塗装工事より(新しく塗る場合)——18.2.4[亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえ](表18.2.3および注記)、18.3.2[錆止め塗料](表18.3.2 亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料の種別)、18.3.3[錆止め塗料塗り](表18.3.5)

最終確認日:2026年8月30日。ガイドラインは案として公開されている技術資料であり、公共建築工事標準仕様書は公共建築工事に適用されるものです。どちらも戸建て住宅の工事を縛るものではありませんが、公的に公開されている技術資料として参照しました。実際の納まりは、住宅の工法と使われている部材によって変わります。壁の中の状態は外から確かめられないため、気になる場合は現地を見てもらってください。

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