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サイディングの縦張りと横張り——変わるのは見た目より、裏にある胴縁の向きです
サイディングの縦張りと横張り。見た目の好みの話だと思われがちですが、本当に変わるのは、外壁材の裏にある「胴縁」の向きです。縦張りにすると、胴縁は横向きになります。すると壁の中の空気が、下から上へ流れなくなります。だから胴縁に隙間を空けるという決まりごとがあり——それを空けていない施工が、実際に存在します。外装材メーカーが、不備事例として写真つきで公開しているくらいです。塗り替えを考えている方に関係するところまで、順番に説明します。
※本ページはプロモーション(広告)を含みます。
このページの内容全19項目
- 自分の家がどちらか、見ればすぐ分かります
- それぞれの短所——「デメリット」で調べている方へ
- 縦張りにすると、胴縁は横向きになります
- 横胴縁は、そのままだと空気が上に流れません
- メーカーが「不備事例」として写真を公開しています
- 通気層があるかどうかは、水切りの隙間で分かります
- 目地に入るのは、シーリングか金物か
- 中間水切りとは——縦張りに横一直線の段差が出る理由
- 「落ちる」と検索されている件
- 塗り替えのときに変わること
- 胴縁は「厚み」も効きます
- 胴縁のピッチと、15mmか18mmか
- 通気胴縁——張り替え・カバー工法のとき、施主が見られるのは板を張る前だけです
- 直張り工法——通気層が無い家があります
- 張り替えやカバー工法で、どちらかを選ぶなら
- では、どちらが優れているのか
- 見積もりのときに聞くこと
- よくある質問
- 参考にした情報
そもそも、うちの壁はサイディングなのか。縦か横かより前に材料を決めたい方は、外壁の種類の見分け方から読んでください。厚さと継ぎ目の間隔で判定できます。
自分の家がどちらか、見ればすぐ分かります
外壁を正面から見て、板の継ぎ目(目地)がどちらに走っているかを見てください。
| 横張り | 縦張り | |
|---|---|---|
| 板の向き | 横長の板を、下から積み上げる | 縦長の板を、横に並べる |
| 目に見える継ぎ目 | 横のラインが何本も走る | 縦のラインが何本も走る |
| 日本の戸建てでの多さ | こちらが主流 | 店舗風・和モダンの住宅で見かけます |
| 裏側の胴縁 | 縦向き(縦胴縁) | 横向き(横胴縁) |
板と胴縁は、必ず直交します。板を横に張るなら胴縁は縦、板を縦に張るなら胴縁は横。この一行が、このページの全部です。
それぞれの短所——「デメリット」で調べている方へ
先に短所から書きます。長所だけを並べても選べないからです。そして当サイトは塗り替えの側から見るので、新築の紹介記事とは着眼点が違います。
| 横張りの短所 | 縦張りの短所 | |
|---|---|---|
| 目地 | 縦の目地が何本もできます。目地はシーリングで埋まっていて、そこが先に傷みます。塗り替えのたびにシーリングの打ち替えが付いてくるのは、こちら側です | 縦の目地は板どうしを噛み合わせるので、シーリングが要らない場合があります。かわりに横方向の継ぎ目に金物が入ります(下の金物の章) |
| 通気 | 胴縁が縦向きなので、空気は下から上へまっすぐ抜けます | 胴縁が横向きになるため、そのままでは空気が上に流れません。切り欠きや専用部材で道を作る必要があります(この章) |
| 選べる板 | 種類が多く、価格帯も広い | 選べる製品が少なくなります。とくに窯業系は横張り前提の柄が多く、縦張り対応品は限られます |
| 見た目 | 横のラインが何本も出ます | 縦のラインですっきり見えますが、壁の途中に横一直線の水切りが入ることがあります(中間水切り) |
| 頼めるかどうか | どの塗装店も扱い慣れています | 数が少ないぶん、「縦張りをやったことがありますか」と聞く価値があります |
短所は「悪い」ではありません
どちらも、メーカーが施工方法を用意している普通の張り方です。短所というのは「手当てが要るところ」という意味で、手当てがされていれば問題になりません。問題になるのは、手当てが省かれたときだけです。そして省かれやすいのは、目に見えない裏側——つまり通気の部分です。
縦張りにすると、胴縁は横向きになります
胴縁というのは、外壁材を留めるために、防水シートの上に打つ細い木材(または金属)のことです。厚みは15mmから18mm程度が一般的で、この厚みぶんの隙間が「通気層」になります。
いまの住宅は、外壁材を壁に直接張らず、この隙間を空けて張ります。外壁通気構法と呼ばれる作り方です。目的は2つあります。
- 万一入った雨水を、下へ落として外に出す
- 壁の中の湿気を、空気の流れで外に出す(結露を防ぐ)
どちらも「下から上へ、空気が抜ける」ことが前提です。水切りのあたりから入った空気が、壁の中を上がって、軒下から出ていく。この流れが成り立って初めて、通気層は通気層になります。
ここで、胴縁の向きが効いてきます。縦胴縁なら、木は縦に走っているので空気は素通りできます。ところが横胴縁は、空気の通り道を真横に塞ぐ形になります。
横胴縁は、そのままだと空気が上に流れません
だから決まりごとがあります。横胴縁には、隙間を空ける。
外装材メーカー(城東テクノ)の技術記事より
「横胴縁が連続している事例です。胴縁に隙間がないため、水切りから軒へ空気が流れません。通気を確保するために、一般的に1820㎜につき30㎜程度の隙間をあけます。」
(参考としてフラット35 木造住宅工事仕様書が挙げられています)
1820mmというのは、6尺——日本の家の基本寸法(1間)です。つまり1間ごとに3センチほど、胴縁を切って隙間を作るということになります。
窓のまわりも同じです。同じ記事に、「窓のまわりで空気の流れが途切れないように隙間を設けている優良事例。一般的に30㎜程度の隙間を確保します」とあります。窓も横胴縁と同じで、空気を止める水平の障害物だからです。
手間が増えるのは、縦張りのほうです。横張り(縦胴縁)なら、胴縁を縦に打つだけで空気は流れます。縦張り(横胴縁)は、隙間の位置を考えながら打つ工程が加わります。
メーカーが「不備事例」として写真を公開しています
ここが大事なところです。「隙間を空ける」というルールがあるということは、空けていない施工が実在するということです。
先ほど引いた記事は、不備事例と優良事例を写真で並べる形で作られています。取り上げられているのは、こういうものです。
| 不備事例 | 何が起きるか |
|---|---|
| 横胴縁が連続している | 水切りから軒へ空気が流れない |
| 窓まわりの通気胴縁に隙間がない | 窓上の壁は通気の入口が無く、湿気が滞留して不具合を生じさせる恐れ |
| 空気の入口を計画していない | そもそも通気層として機能しない |
| 水切り上の隙間が不足 | 入口が狭く、空気が入りにくい |
| 透湿防水シートのたるみ | 空気の流れを妨げる恐れ |
| 吹き付け断熱材が膨張して通気層を塞ぐ | 外装仕上げ後では確認できない |
どれも、外壁を張ってしまえば見えません。最後の一行——「外装仕上げ後では確認できない」——が、この話の性質をそのまま表しています。
だから、いま縦張りの家に住んでいて何ともないなら、それは大丈夫だったということです。逆に、壁の中の結露が疑われる症状(外壁の一部だけ傷みが早い、いつも湿っている面がある)があるなら、通気の話を疑う価値があります。
通気層があるかどうかは、水切りの隙間で分かります
縦張りか横張りかより先に、確かめておきたいことがあります。そもそも通気層がある家かどうかです。
古い家では、外壁材を防水シートの上に直接張る「直貼り」で施工されていることがあります。この場合は胴縁がないので、縦も横も関係ありません。
見分け方は、水切りのあたりです。
外装材メーカーの記事には、「通気を確保するために、外壁仕上げ材の下端と水切りとの隙間を一般的に10〜15㎜程度あけます」とあります(サイディングメーカーの施工要領書を要確認、とも書かれています)。
外壁の一番下と水切りの間を、横から覗いてみてください。指が入るくらいの奥行きがあれば通気層がある可能性が高く、外壁材の厚みぶんしかなければ直貼りの可能性があります。
直貼りだと、塗り替えの塗料の選び方が変わります。壁の中の湿気が塗膜の裏に回ると、膨れや剥がれの原因になるからです。塗装が剥がれる仕組みや外壁の傷みの限界で書いたことと、同じ話につながります。
目地に入るのは、シーリングか金物か——メーカーの納まり図で違います
ここが、塗り替えの見積もりにいちばん効く違いです。当サイトはケイミューが公開している参考納まり図を、縦張り用と横張り用の2枚並べて読みました(いずれも木造・通気金具留め・15mm仕様)。出てくる部材の名前が違います。
| 部位 | 横張りの図に出てくる部材 | 縦張りの図に出てくる部材 |
|---|---|---|
| 土台部 | 通気金具(15mm)スターター/土台水切り | 縦張り用通気金具(15mm)ロングスターター/縦張り用留め金具(5mm)ロングスターター/土台水切り |
| 目地部(板どうしの継ぎ目) | 合いじゃくり/ハット型ジョイナー/シーリング | 合いじゃくり/中間水切り(縦張り金具留め(15mm)用) |
| 出隅部 | 横張り用通気金具(15mm)出隅用/同質出隅/シーリング | 縦張り用通気金具(15mm)出隅用/同質出隅/シーリング |
| 入隅部 | ハット型ジョイナー(片側タイプ)/入隅捨て水切り/スペーサー15 | ハット型ジョイナー(片側タイプ)/入隅捨て水切り/スペーサー15 |
| 留め方の表記 | 「専用釘又は専用ビス」 | 「専用ビス」 |
| 軒天部 | 補助胴縁(t=15)/胴縁固定釘/リング釘45 | 補助胴縁15×45 長さ200程度/リング釘 |
ケイミュー「窯業系サイディング/木造・縦張り/通気金具留め施工 参考納まり図」および「同・横張り」より、当サイトが部材名を書き出しました(2026年9月10日確認)。これは通気金具留めの図です。釘留めなど別の施工方法では、使う部材が変わります。実際の仕様はお住まいの建物の図面と、施工した会社の記録が正です。
ここから読み取れる、いちばん実用的なこと
横張りの目地部には「ハット型ジョイナー+シーリング」が出てきて、縦張りの目地部には「中間水切り」が出てきます。つまり継ぎ目の処理が、片方はシーリング寄り、片方は金物寄りということです。
塗り替えの見積もりでいうと、横張りはシーリングの打ち替え数量が大きくなりやすく、縦張りは金物まわりの確認が中心になりやすい。同じ家の広さでも、見積書の内訳の形が変わります(見積書の内訳/シーリング)。
中間水切りとは——縦張りの壁に、横一直線の段差が出る理由
縦張りの家を見ていると、壁の途中に横一直線の細い金物が入っていることがあります。「なぜここだけ横線が入るのか」と思った方は、これです。
板には長さの限りがあります。壁の高さが板の長さを超えると、どこかで継がなければなりません。横張りなら板を積み上げるので継ぎ目は元から横向きですが、縦張りは板が縦なので、継ぐと横一直線のラインが1本入ります。そこに入る部材が中間水切りです。ケイミューの縦張りの納まり図にも「中間水切り(縦張り金具留め(15mm)用)」として描かれています。
| 気になること | 実際のところ |
|---|---|
| 見た目が気になる | 段差は出ます。ただし雨を切って外に出すための部材なので、無くす方向の相談ではなく「どの高さに入るか」の相談になります |
| 塗り替えのとき塗るのか | 金物なので、板とは別の扱いになります。塗るのか、塗らないのか、交換なのか——見積書に行があるか確認してください |
| 点検で見るところ | 水切りの下端です。ここから水が切れずに壁を伝っていると、下の面に筋状の汚れが出ます |
「落ちる」と検索されている件
縦張りサイディングについて「どのくらいで落ちますか」と調べている方がいます。不安の中身は、板が外れてこないか、ということだと思います。
当サイトは年数を断定しません。板が外れるかどうかは、張り方より留め方と下地の状態で決まるからです。そのうえで、確かめられることを書きます。
- 留め方を確認するケイミューの参考納まり図では、縦張りは通気金具(15mm)と専用ビスで留める図が示されています。横張りの図は「専用釘又は専用ビス」。金具留めか釘留めかで、板の保持のされ方が違います。自宅がどちらかは、図面か施工記録で分かります
- 胴縁の状態を疑う板を留めているのは胴縁です。胴縁が濡れて傷んでいれば、板がしっかりしていても保持力は落ちます。通気が確保されているかが、ここで効いてきます(横胴縁の通気)
- 浮きと反りを見る板の端が浮いている、目地の段差が大きくなっている、触るとがたつく——これは点検の対象です。サイディングの反りと剥がれも参考にしてください
地震や台風のあとは、目視だけでも見てください。とくに台風のあとは、飛来物が当たった跡がないかを確認する価値があります。
塗り替えのときに変わること
張り方の違いは、塗り替えの見積もりにも出てきます。ただし「縦張りだからいくら高い」という単純な話ではありません。
シーリング(コーキング)の数量
目地の走り方が変わるので、シーリングの総延長も変わります。ただし板の寸法・開口部の数・家の形で大きく変わるので、張り方だけで決まるものではありません。シーリングの数量がどう決まるかは別ページにまとめました。「30坪なら何メートル」と断定しないのは、家ごとに違いすぎるからです。
雨だれと汚れの出方
縦張りは水が縦に流れ落ちやすく、横張りは横の目地に水が溜まりやすい——一般にはそう言われます。ただし汚れの出方は方位・軒の出・周囲の環境に大きく左右されるので、張り方だけで結論は出ません。汚れの目立ちにくさで書いたように、色や環境のほうがはるかに効きます。
点検で見るところ
ここは実際に違います。横張りは、板同士が横に重なる部分(実/さね)に水が入りやすい向きです。縦張りは、上下の継ぎ目(横目地)が数少ないぶん、そこに負担が集中します。どちらも目地の切れ・痩せを見るのは同じですが、見る場所が変わります。何社かに見てもらうと、どこを見ているかで力量が分かります。
そして共通なのが反りです。サイディングの反りは、留め方(釘打ちか金具留めか)や板の含水で起きるもので、張り方が縦でも横でも起こります。
胴縁は「厚み」も効きます
胴縁の向きの次に効くのが、厚みです。胴縁の厚みが、そのまま通気層の厚みになるからです。
一般に使われるのは15mmから18mm程度。ここが薄いと、空気の通り道が細くなります。逆に厚ければいいというものでもなく、外壁材を留める強度や、窓まわりの納まりとの兼ね合いで決まります。
材質にも幅があります。木の胴縁が一般的ですが、樹脂製や金属製の通気部材もあります。横胴縁でも通気が取れるように、あらかじめ空気の通り道が作られている製品も市販されています。縦張りだから通気が悪い、と決めつけられない理由のひとつがこれです。
そして外壁材を留める方法も、胴縁とセットの話です。釘で板を打ち抜くのか、金具で引っ掛けるのか。これも板の厚みで決まっていて、留め方は反りの出方に関わります。いずれにしても、塗り替えの段階では選び直せません。選べるのは張り替えかカバー工法のときです。
胴縁のピッチと、15mmか18mmか
「胴縁 ピッチ」「胴縁 15mm 18mm」で調べている方がいます。施主が自分で決める項目ではありませんが、見積書と図面を読むときに意味が分かると強いです。
| 用語 | 意味 | 施主にとっての読みどころ |
|---|---|---|
| ピッチ | 胴縁を何ミリ間隔で並べるか | 間隔が広いほど、板を支える点が減ります。張り替えやカバー工法の見積もりでは、胴縁の本数が数量として出てきます |
| 厚み(15mm/18mm) | 胴縁の厚み=そのまま通気層の厚みになります | ケイミューの参考納まり図は15mm仕様として通気金具(15mm)を図示しています。厚い側が悪いということはありません。下地の状況で使い分けられます |
| 幅 | 胴縁の幅 | 納まり図の軒天部には「補助胴縁15×45 長さ200程度」(縦張り)という指定も出てきます。部分的に足す胴縁にも寸法が決められているということです |
覚えておく価値があるのは、厚みが通気層の厚みそのものだという一点です。胴縁が薄い=空気の通り道が狭い。ゼロなら、通気層が無いということになります。それが次の話です。
通気胴縁——張り替え・カバー工法のとき、施主が見られるのは板を張る前だけです
「通気胴縁」は、外壁材の裏に空気の通り道(通気層)をつくるために打つ下地の角材です。塗り替えでは触りませんが、張り替えやカバー工法では、この胴縁から打ち直します。見積書に「胴縁」「通気胴縁」の行が数量つきで出てくるのは、そのためです。
国土交通省の研究機関である国土技術政策総合研究所(国総研)は、住まい手向けの解説で、胴縁についてこう書いています。
縦胴縁仕様を選択しても、通気胴縁の配置が不適切な場合は充分に通気されないことがあります。通気層の通気量を充分に確保するためには、胴縁の配置と通気層の厚さが重要となります。
とくに注意を促しているのが窓まわりです。
サッシと通気胴縁には十分な隙間を空ける必要があります。(中略)残念ながら、通気胴縁とサッシの間に隙間が設けられていない施工も多いので、このことを検査員に確認してもらうか、住まい手が直接確認することを推奨します。具体的には、胴縁がサッシフィンと重ならないようにし、かつ、窓全体を胴縁で密閉しないように隙間を設けて下さい。
「住まい手が直接確認することを推奨」とまで書かれています。ただし、胴縁が見えるのは、胴縁を打ってから外壁材を張るまでの短い間だけです。張ってしまえば、外からは二度と見えません。
| いつ | 頼むこと | なぜ |
|---|---|---|
| 契約の前 | 「胴縁は縦ですか横ですか、厚みは何ミリですか」と聞き、見積書の胴縁の行に数量と寸法を書いてもらう | 国総研は、横張りなら縦胴縁か通気留付金具、縦張りなら横胴縁(または通気留付金具)と整理しています。張り方と胴縁の向きが合っているかを、ここで確かめられます |
| 胴縁を打った日 | 窓まわりと、壁の下端(水切りの上)の写真を撮っておいてもらう | サッシと胴縁の隙間、胴縁どうしの隙間は、外壁材を張ると見えなくなります |
| 引き渡しのとき | その写真を、工事写真としてもらう | あとで膨れや雨じみが出たとき、下地がどうだったかを確かめる手がかりになります |
国総研は、通気層の厚さを「一般的に15mm程度」とし、その裏の透湿防水シートの弛みや捲れにも注意を促しています。胴縁の厚みの話は上の章に書きました。写真を頼まれて嫌がる会社は、多くありません。何社かに見積もりを出してもらうとき、同じ一言を添えると、下地の話にどこまで答えられるかが比べられます。
直張り工法——通気層が無い家があります
胴縁を入れず、防水紙の上に板を直接張る工法があります。直張り(じかばり)と呼ばれます。通気層が無いので、壁の中に入った湿気の逃げ道がありません。
自分の家がどちらかは、水切りの隙間を見れば見当が付きます。土台の水切りと外壁の間に指が入るくらいの隙間があれば通気層があり、外壁が水切りにぴったり付いていれば、通気層が無い可能性があります。
直張りだと分かったら、塗料の選び方が変わります
通気層が無い壁は、内側にこもった湿気が塗膜を押し上げることがあります。そのため、透湿性のある塗料を選ぶ、密閉しすぎない、といった判断が出てきます。「うちは直張りのようですが、塗料は何を使いますか」と聞いてください。この質問に理由まで答えられる会社は、下地を見ています。
張り替えやカバー工法で、どちらかを選ぶなら
塗り替えでは張り方は変わりませんが、外壁ごとやり直すなら、ここで選ぶことになります。判断材料を整理します。
| こう考えているなら | 向いているほう | 理由 |
|---|---|---|
| とにかく無難に、確実に | 横張り | 胴縁が縦になるので通気の工程が単純。日本の戸建てで主流なので、施工に慣れた会社も多いです |
| 縦のラインで見せたい・和モダンにしたい | 縦張り | デザインの理由としては十分です。ただし胴縁の隙間の話を、会社が分かっているかは確認してください |
| 建物を高く、すっきり見せたい | 縦張り | 縦のラインは高さを強調します。ただし面積が広い壁ほど、目地の処理が目立ちます |
| 将来の点検・補修をラクにしたい | 横張り | 扱った経験のある職人が多いほうが、後々の相談先も探しやすいという現実的な理由です |
費用は、張り方そのものでは大きく変わりません。変わるのは選んだ外壁材のグレードと下地の状態です。どちらで見積もるかを両方出してもらうと、その会社が何で金額を決めているのかが見えます。
では、どちらが優れているのか
通気という一点だけで見れば、横張り(縦胴縁)のほうが素直です。空気が最初から上に流れる向きだからです。縦張りは、隙間を空けるという工程が正しく行われて初めて、同じ状態になります。
ただし「縦張りはダメ」ではありません。理由は3つあります。
- 基準どおり施工されていれば、通気は確保されます。だからこそ仕様書に数字が書かれています
- 通気を確保する部材が売られています。胴縁そのものに空気の穴が空いているタイプなど、横胴縁でも通気が取れる製品があります
- いま建っていて問題が出ていないなら、その家では成立しているということです
塗り替えを考えている人にとって、この話の意味は「良し悪し」ではありません。「壁の中には、外から見えない作りの違いがある」——そこを分かったうえで業者の話を聞けるかどうか、です。
見積もりのときに聞くこと
| 聞くこと | 何が見えるか |
|---|---|
| 「うちは通気工法ですか、直貼りですか」 | 水切りの隙間を見れば答えられる質問です。見にも行かずに答える会社より、確認してから答える会社のほうが安心できます |
| 「縦張りですが、通気で気をつける点はありますか」 | 胴縁の向きの話が出てくるか。出てこなくても即失格ではありませんが、出てくれば下地まで見ている会社です |
| 「シーリングの数量は何メートルで見ていますか」 | 張り方で変わる部分です。数量の考え方を持っているかが分かります |
| 「膨れや剥がれが出ている面はありますか」 | 直貼りや通気不良のサインが出ていないかの確認です |
どれも、答えられない=悪い業者、という話ではありません。ただ同じ質問を何社かに投げると、返ってくる答えの深さははっきり分かれます。同じ家を複数社に見てもらういちばんの理由は、そこにあります。
よくある質問
縦張りと横張りで、塗り替えの費用は変わりますか?
張り方だけで決まるものではありません。シーリングの総延長は変わりますが、板の寸法・開口部の数・家の形のほうが影響が大きいです。当サイトが「30坪なら何メートル」と断定しないのも同じ理由です。数量の考え方を見て、見積書の数字を検算してみてください。
縦張りは通気が悪いと聞きましたが、本当ですか?
「そのままだと空気が流れない」というのは事実です。縦張りでは胴縁が横向きになるからです。だから一般に1820mmにつき30mm程度の隙間を空けることになっていて(参考:フラット35 木造住宅工事仕様書)、それが行われていれば通気は確保されます。また、通気を確保できる胴縁部材も市販されています。
うちが縦張りなのですが、心配したほうがいいですか?
いま不具合が出ていないなら、そのまま心配する必要はありません。壁の中の作りは外から確認できませんし、掘り返して調べるようなものでもありません。気にすべきなのは症状のほうです。特定の面だけ傷みが早い、塗膜が剥がれたり膨れたりしている、といったことがあれば、そこから見てもらってください。複数社に同じ症状を見せると、原因の見立てが揃うかどうかで判断できます。
塗り替えのときに、縦張りから横張りに変えられますか?
塗り替えでは変わりません。張り方を変えるのは張り替えかカバー工法の話になります。カバー工法では、既存の外壁の上に胴縁を打ってから新しい外壁材を張るので、そこで向きが決まります。
金属サイディングでも同じですか?
胴縁の向きの考え方は同じです。金属サイディングにも縦張り・横張りがあり、板と胴縁が直交する点も変わりません。ただし材料の性質(軽さ、断熱材との一体構造など)が違うので、選び方の基準は別に考えてください。
このページは2026年8月31日に、外装材メーカーの技術記事(城東テクノ「外壁通気構法で注意したい施工のポイント」/記事提供:株式会社NEXT STAGE)で確認して書きました。数値はいずれも「一般的に」という前提のもので、実際の施工基準はサイディングメーカーの施工要領書によります。
縦張りサイディングのデメリットは何ですか?
3つあります。ひとつは通気で、胴縁が横向きになるため、そのままでは空気が上に流れません。切り欠きや専用部材で道を作る必要があります。ふたつめは選べる製品の少なさで、とくに窯業系は横張り前提の柄が多く、縦張り対応品は限られます。みっつめは見た目で、壁の高さが板の長さを超えると、途中に中間水切りという横一直線の金物が入ります。ただしどれも、手当てがされていれば問題になる話ではありません。
縦張りサイディングはどのくらいで落ちますか?
当サイトは年数を断定しません。板が外れるかどうかは、張り方より留め方と下地の状態で決まるからです。ケイミューの参考納まり図では、縦張りは通気金具(15mm)と専用ビスで留める図が示されています(横張りの図は「専用釘又は専用ビス」)。確かめるべきは、留め方が金具か釘か、胴縁が湿気で傷んでいないか、板の端に浮きや反りが出ていないかの3点です。地震や台風のあとは目視でも見てください。
縦張りの壁に横一直線の金物が入っています。これは何ですか?
中間水切りだと思われます。板には長さの限りがあるため、壁の高さが板の長さを超えると、どこかで継ぐ必要があります。縦張りは板が縦なので、継ぐと横一直線のラインが1本入ります。ケイミューの縦張りの納まり図にも「中間水切り(縦張り金具留め(15mm)用)」として描かれています。雨を切って外に出すための部材なので、点検では水切りの下端を見てください。
横張りと縦張りで、シーリングの量は変わりますか?
変わります。ケイミューの参考納まり図を並べると、横張りの目地部には「ハット型ジョイナー+シーリング」が出てきて、縦張りの目地部には「中間水切り」が出てきます。つまり継ぎ目の処理が、横張りはシーリング寄り、縦張りは金物寄りです。塗り替えの見積もりでは、横張りのほうがシーリングの打ち替え数量が大きくなりやすく、縦張りは金物まわりの確認が中心になりやすい、という違いが出ます。
うちは通気層が無い「直張り」のようです。塗り替えはできますか?
できますが、塗料の選び方が変わります。通気層が無い壁は、内側にこもった湿気が塗膜を押し上げることがあるため、透湿性のある塗料を選ぶ、密閉しすぎない、といった判断が出てきます。「うちは直張りのようですが、塗料は何を使いますか」と聞いて、理由まで答えられるか確かめてください。すでに膨れや剥がれが出ている場合は、塗るだけでは解決しないことがあります。
参考にした情報
国土技術政策総合研究所「木造住宅を建てる前に確認しておきたい7つのポイント 4.外壁内の耐久性の確保」(https://www.nilim.go.jp/lab/hcg/jyutakuqa/durability.html)——通気層の厚さ(一般的に15mm程度)、縦胴縁仕様・横胴縁仕様・通気留付金具仕様、「3)通気胴縁の配置に注意」「4)透湿防水シートの弛みや捲れに注意」。2026年9月11日確認
- ケイミュー「窯業系サイディング/木造・縦張り/通気金具留め施工 参考納まり図」および「同・横張り」(kmew.co.jp の納まり図PDF・いずれも15mm仕様)——土台部・目地部・出隅部・入隅部・開口部・軒天部に描かれた部材名を当サイトが書き出しました。縦張り側の「中間水切り(縦張り金具留め(15mm)用)」「縦張り用通気金具(15mm)ロングスターター」「補助胴縁15×45 長さ200程度」、横張り側の「ハット型ジョイナー」「通気金具(15mm)スターター」「補助胴縁(t=15)」、留め方の表記の違い(横張り=専用釘又は専用ビス/縦張り=専用ビス)は、この2枚の図によります。2026年9月10日確認
- 城東テクノ株式会社「外壁通気構法で求められる住宅品質vol.3『外壁通気構法で注意したい施工のポイント』」(2019年10月23日/記事提供:株式会社NEXT STAGE)——横胴縁が連続している不備事例について「胴縁に隙間がないため、水切りから軒へ空気が流れません。通気を確保するために、一般的に1820㎜につき30㎜程度の隙間をあけます(参考:フラット35 木造住宅工事仕様書)」。窓まわりについて「空気の流れが途切れないように隙間を設けている優良事例。一般的に30㎜程度の隙間を確保します(参考:フラット35 木造住宅工事仕様書)」。空気の入口について「外壁仕上げ材の下端と水切りとの隙間を一般的に10〜15㎜程度あけます(サイディングメーカーの施工要領書を要確認)」。そのほか、空気の入口を計画していない事例、窓まわりの通気胴縁に隙間がない事例(「窓上の壁では通気の入り口が無いため、湿気が滞留してしまい不具合を生じさせる恐れ」)、透湿防水シートのたるみ、吹き付け断熱材が通気層を塞ぐ事例(「外装仕上げ後では確認できない」)を不備事例として掲載